乾癬の患者さんにとって適切なスキンケアとは | 乾癬治療【明日の乾癬 by UCBCares】

専門医に聞く乾癬治療

乾癬の患者さんにとって
適切なスキンケアとは

お話を聞いた先生はこちら

社会福祉法人聖母会 聖母病院
皮膚科部長

小林里実
先生

乾癬の皮膚症状は、患者さんのQOLを低下させる大きな原因の1つです。
近年は、男性でも健康的な肌や清潔感が重視されるようになりました。
少しでも肌の状態を良くしたい、という患者さんの悩みを解消するためのスキンケアについて、
聖母病院の皮膚科部長である小林里実先生にお話を伺いました。

スキンケアの最大の基本は
「こすらない」と「保湿」です

スキンケアの基本は、洗浄、保湿、紫外線対策の3 つです。
洗顔する時や身体を洗う時に最も大事なポイントは、ゴシゴシと「こすらない」ことです。皮膚の汚れは、泡で浮かせて洗い流すと良いので、洗浄剤をネットでしっかり泡立ててから使用したり、泡タイプのソープを使ったりすることをお勧めします。また洗顔前のメイク落としでも、こすらないものを選ぶようにしてください。どのような商品を選ぶかも大切ですが、どのようなやり方をするかがスキンケアにおいてはより重要です。また化粧水や乳液でも皮膚をできるだけ刺激しないことが大切です。無添加・無香料など肌に優しいとされる商品も多くありますが、それ以上に乾癬では保湿力の高いものを選ぶことが良いと思います。
一方、女性よりも皮脂の分泌量が多く炎症を引き起こしやすいのが男性の肌です。毛穴には様々な菌が棲息し、過剰にたまった皮脂を栄養にして増える真菌群もあり、それらが増殖すると炎症が起こりやすくなります。こすらないよう気を付けながら皮脂をきれいに洗い流し、きちんと保湿をしましょう。また、ひげ剃りには注意が必要です。T字のひげ剃りを使うと、刃によっては皮膚が傷付いてしまい、そこから乾癬が生じることがあります。顔に皮疹がある場合は、皮膚を傷付けにくい電気カミソリのほうが良いと思います。剃った後は、優しく保湿をしてください。
この2~ 3 年、新型コロナウイルス感染症の影響により自宅で過ごす方が増えましたが、エアコンなど空調の風を浴び続けることで肌の乾燥が進みます。乾燥すると皮膚が傷付きやすくなり、乾癬にも影響します。肌が乾燥しないよう、化粧水や乳液で十分に保湿することが大切です。マスクの素材も自分に合ったものを選びましょう。
また高温多湿の夏は、汗や皮脂の分泌が増えますので、戸外で活動する場合、汗はこまめに拭き取り、洗顔後は夏用のローションや乳液で保湿をすると良いでしょう。

シャンプーの仕方は状態に応じて
いろいろな方法があります

顔に多くの皮疹が出ている方は、主治医に相談して自分の状態に合うスキンケアを行うようにしてください。顔に皮疹がまったく出ていない方は、こすらなければ、市販の化粧水や乳液など、お好きなものを使ってかまいません。気分がアップする香料の入ったものなどで、ストレスを解消するのも良いと思います。
頭皮は軟膏だと効果があってもベタつきが不快になったり、ローションだとベタつきはないけれど効果が感じられないという方もいらして、使い心地と効果は一致しないことがあります。乾癬の症状の程度にもよりますが、単独の外用薬使用でうまくいかない場合は、「ショートコンタクトセラピー」を追加して活用するのも1つの手段です。これは、皮膚に薬剤をつける時間を短くして洗い流す方法です。たとえば、ステロイド配合の医薬品シャンプーは、頭皮に浸透させ、15分後に洗い流すだけでも、通常の外用の6割ほどの効果があるとされています。
治りにくい場合、ステロイド配合シャンプーと、軟膏よりは塗りやすい親油性ジェルを組み合わせる方法もお勧めです。親油性ジェルを塗って20分おき、その後ステロイド配合シャンプーをするとか、ステロイド配合シャンプーをした後に、親油性ジェルを塗って寝て、べたつくなら朝もう1回シャンプーをするといった具合に組み合わせると、効果が出る場合があります。同じ要領でフォーム剤も頭皮に使用できます。脂漏性皮膚炎用の医薬品シャンプーは、乾癬の方にも合うようです。ただ一般のシャンプーと比べると値段がやや高めです。頭皮の皮疹が悪化している時は脂漏性皮膚炎用のシャンプーを使い、症状がおさまっている時期は、お好きな市販シャンプーを使うなど、使い分けても良いと思います。

間違った使用方法が多い塗り薬や保湿剤
皮膚科の塗り薬は「擦り込まないこと」を知っていますか

塗り薬は、正しい塗り方をしなければ効果を得にくいので注意が必要です。「良くなるように」と気持ちを込めて塗り薬を擦り込んでいる患者さんは少なくありませんが、“擦り込む”ことは、絶対にやめていただきたいと思います。薬剤師さんに「しっかり塗ってくださいね」と指導され、よく擦り込んで外用する方がいらっしゃいますが、これは間違いです。皮膚科の塗り薬は、擦り込んではいけないものなのです。薬を塗ると、皮膚がベタベタしたりヌルヌルしたりします。
これは基剤で、その中に浸透させたい成分が均等に浮いているような状態で存在します。それらは毛穴や角層から細胞核まで浸透していくのであり(図)、決して擦り込むことで浸透するわけではありません。
擦り込むことは、むしろ皮膚に物理的刺激を与え、乾癬を悪化させます(ケブネル現象)。
擦り込む必要がないというのは保湿剤も同様です。広範囲につける時は伸びの良い保湿剤を選び、十分な保湿が必要な部分は、伸びが少ない保湿剤を重ね塗りするなど乾癬の状況により工夫しましょう。
塗った直後はベタベタしても、とにかく「こすらない」。これを徹底していただきたいと思います。
また人目に触れるため、多くの患者さんが悩んでいるのが爪の症状です。塗り薬でかなり改善しますが、爪の甲に塗るのではなく、爪母という「爪の根元の皮膚」に塗ることが大事です。塗った後に浸透のためテープを貼っておくと、より効果的です。爪がはがれるタイプの爪症状の場合は、爪の下の皮膚に外用します。

「Rebrand Yourself vol.4」2022年11月掲載

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